病診連携

医学研究所北野病院 脳神経センター

脳神経外科 戸田 弘紀


医学研究所北野病院脳神経外科のハイブリッド手術室をはじめとする最近の取り組み(2023.11.15)

昨年60周年を迎えた医学研究所北野病院脳神経外科では、これまでの伝統を守りつつ、新しい治療技術を積極的に導入しています。最近の取り組みとして、ハイブリッド手術室での脳血管障害手術、外視鏡による脳・脊椎手術、またMRガイド下集束超音波治療を用いた本態性振戦やパーキンソン病の治療、そして日本臨床研究グループ(JCOG)の脳腫瘍グループへの参加を紹介させていただきます。

まず今秋に導入されたハイブリッド手術室(スライド3)では、血管内治療と開頭手術を同じ部屋で同時に行うことができるようになりました。これまで別々に行われていた二つの治療を並行して進めることができますので、バイパス手術と血管内治療を組み合わせた複雑な脳動脈瘤(スライド4/5)の手術や、脳血管内治療が必須の巨大な脳動静脈奇形(スライド6/7)の手術などが可能になります。二つの手術がひとつになることで患者さんの身体的負担は減少しますし、二つの治療の効果的な組み合わせにより安全性も高まります。またハイブリッド手術室の画像装置を有効活用し、脳血管障害以外にも脳腫瘍や脊椎・脊髄疾患さらに脳深部刺激療法の手術など様々な分野の脳神経外科手術に応用することができます。今後はハイブリッド手術室の特性を活かしてより安全で効果的な脳神経外科手術を提供してまいります。

次に導入後3年以上が経過した外視鏡装置(スライド8)は、当院脳神経外科の標準的な治療装置として定着し、ほとんど全ての手術を外視鏡で行っています。外視鏡では高精度の立体画像を、術者だけでなく手術室にいる医療スタッフ全員が確認できます。また執刀医は時に窮屈な顕微鏡手術の姿勢からも解放されますので、執刀医の身体的負担軽減による手術の安全性向上にも貢献しています。当院は外視鏡の導入が国内でも早かったため、本邦でも有数の手術数を誇る顔面けいれんや三叉神経痛の手術(スライド9 文献1,2)、あるいは近年当科で手術を受ける方が増えている脊椎手術での効果を文献報告しました(スライド10 文献3)。

また本態性振戦やパーキンソン病の振戦に対して効果の高いMRガイド下集束超音波治療(FUS,スライド13)も導入後3年目となり、これまでに100名を超える方が治療を受けています(スライド14)。本態性振戦はおよそ7割程度の振戦抑制効果が得られますが、我々は、より一点に超音波が集束した症例で、治療効果が安定していることを報告しました(スライド15,16,文献4)。これを踏まえ、より高精度で、また患者さんの頭蓋骨の状態に応じた超音波のエネルギー調整で治療効果が高まるよう治療技術を工夫しています。またチーム医療体制で患者さんの治療に対する満足度を見直し、より満足いただける治療が提供できるよう取り組んでおります(スライド17,18)。

最後にJCOG脳腫瘍グループの新規施設となったことを報告いたします。当院は以前から良性・悪性を問わず様々な脳腫瘍の治療を提供してまいりましたが(スライド19)、国内で有数の脳腫瘍治療施設が参加するJCOG脳腫瘍グループに今年から加わることができました(スライド20)。大阪府内では大阪大学、大阪国際がんセンター、当院の3施設のみであり、様々な治験の提供にも関与いたしますので、神経膠腫(グリオーマ)、膠芽腫(グリオブラストーマ)、転移性脳腫瘍、中枢神経原発性リンパ腫などの悪性脳腫瘍に対する治療を求められる患者さんがおられましたらどうぞ当院の脳腫瘍外来までご紹介ください。もちろん、髄膜腫や聴神経腫瘍など良性脳腫瘍に対する外科治療も上にご紹介いたしました治療機器を用いて安全に行っております。

以上医学研究所北野病院脳神経外科の最近の取り組みをご紹介いたしました。
北区医師会会員の先生におかれましては、今後ともご指導ご鞭撻のほど賜りますようどうかよろしくお願い申し上げます。

文献

  1. Hashikata H, Maki Y, Futamura G, et al. Functionality and Usability of the Exoscope in Microvascular Decompression for Hemifacial Spasm and Trigeminal Neuralgia. World Neurosurg. Sep 6 2023;doi:10.1016/j.wneu.2023.08.138
  2. Toda H, Ishibashi R, Hashikata H. Exoscopic microvascular decompression for hemifacial spasm and trigeminal neuralgia. Neurosurg Focus Video. Jan 2024;9(1):E1.
  3. Kitamura K, Hayashi H, Ishibashi R, Toda H. Recovery from hemidiaphragmatic paralysis with improved respiratory function following cervical laminoplasty and foraminotomy: illustrative case. J Neurosurg Case Lessons. Oct 10 2022;4(15)doi:10.3171/case22282
  4. 北村 和士,元家 亮太,西田 南海子,ほか.本態性振戦に対するMRガイド下集束超音波治療後早期の治療効果変動と6〜12カ月後の治療効果.脳神経外科ジャーナル.2022;31(10):639-646. doi:10.7887/jcns.31.639

※ 詳細な内容は以下をご参照ください。
  ▼すべての図表をPDFで見る(7.14MB)


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